砂のクリスマス



たまに
かりのついでに
森を探してみるけれど

いまだに
あったことはない

☆彡☆彡☆

――ああ、そうだ
今日はクリスマスだ

狩りの帰り
街の浮き立つような輝きに
砂は気が付いた

クリスマスは知っていたが
サンタというものは
よくわからなかった

精霊の一種かもしれない

もしかしたら
精霊ってものは
目に見えるものではないのかもしれない

この時期に
森に召されたものたちが
歩いてきて
良い子の願いをかなえるのかもしれない……

☆彡☆彡☆

砂は思う

今年……ぼくは
とても良い子にしていた
泣き言も言わないようにしていたし
不満も言わないようにしていた

ひとがいやがる重い仕事を
そっせんしてやってきた

良いと言えるのではないか

今年は
ぼくは
良い子だったと思う

そうして砂は
空に向かって
歩きながら
願った


なにか
こころ
うまるものを
ください

☆彡☆彡☆

翌朝

狩りをする森の前に
ひとりのひとがたっていた


…やあ

砂が魔物を狩って帰るまで
その人はずっとそこにいた
道々
その人は砂の後ろをついてきた

砂は特に何も言わなかった

何か言うべきか考えたが
思い浮かばなかったんだ

それで、
でも
聞きたいことはあった

☆彡☆彡☆

「なぁ、機嫌は良いか」

その人は少し笑ってこたえた
「だいぶよいよ」

☆彡☆彡☆


砂は願っただろう
空に……

それで俺は
お前のために来たんだよ

忘れないうちにいっておこう
どうもこの世界は
あの頃のこと
覚えておけないみたいだから

……空から君を見ていた

☆彡☆彡☆

ひとのぬくもりというのは
ずいぶん温かいものだと
砂は思った


それ以来
砂はそいつと暮らしている


―― 機嫌はどうだ

―― だいぶ良いよ

Fin.

2020-12-25 16:04:17