黒鳥

何かを見つけたかった。

何にも見つからなかった。

岳が、黒鳥のおっぽをじっと見ている。

大丈夫そうですよ、安心ですね。そういう岳の顔がほっと緩む

その顔を見ていたら、昨日の夜の甘美な痛みを思い出した。
岳が私に気づいて、どうしたんですか、と首をかしげる

早くはなってやったら

目をそらして見上げれば、群青空に茜雲。
もうすぐ日が暮れる


ふっ


岳が息を吸い込み、黒鳥をはなつ、

ばたたたたたた、と、おお、おお、と、黒鳥が羽を撒き散らし、飛ぶ
空へ、吸い込まれていった

岳が唖然と見ていた



「…綺麗だ」



?王子、何かおっしゃいましたか


いや、油断していた

王子?


微笑みながら、岳が私の頬に触れた、きづかなければいい
触れられるたびに、きつくかちりと、腕の筋肉がかたばる

帰りましょうか


優しく私をなで、岳が言う


昨日の夜、お前で自慰をしたよ
お前のことを考えると
熱が溜まる

かなしい

声にならない声を飲み込みながら、岳の手を握り、
空をもいっぺん見上げた



私の剣で倒れた黒鳥は、もう見えない

岳はもうすぐ、この城を出る。