もうおまえの人生を歩んだ方がいいよ

刑事は白い砂浜に素足をつけて、
たばこを吸っている

12の時に当時の担任だった先生を犯したのが始まりで
それからなんやかんやと癖が付き、
気がつきゃこんな風に、顔見知りの刑事まで出来た

セックス、エンコー、セックス、セックス、レイプ


「本当にお父さんとは会わないのか?」
「会って何はなしゃいいんだ?」

たばこくれ、と言うといつものこぶしでごっつり叩かれた。

「おまえは本当にどうしようもないな」
「ああ、よく言われるー」

けらけら笑うと、笑い事か、と、刑事は俺の隣に座った

ざーんざーん、波の音

波の音は、気が滅入る
オヤジの声を思い出す、おかしいな、んな何遍も聞いた覚え、無いんだ、
なのに、

波にオヤジが思い浮かぶ





あれは深夜、遠くで祭りがやっていたらしい、
帰り道だったのだろう
父親に抱かれる子供を見てその子からりんごあめを奪った
ガキが泣き出し、その男は俺を怒鳴った
オヤジは無表情に男に謝った、俺の頭を抑え付けた
すいません、なにぶん、親が居ない子ですから
俺はりんごあめを必死になって守っていた


なあ、祭り行きたい
無言で、1000円くれたっけなぁ




「泣くなよ」

「泣いてねーよ」

笑いながらほっぺたに触ると、確かに泣いていた

ああ、なんだ、

なんだ、そうか、そうか、そうか、

先生に愛されたかったわけじゃねー、
ドラッグ売りの兄ちゃんに愛されたかったわけじゃねー
やくざのおっさんに愛されたかったわけじゃねー

金が儲かるから、セックスしてたんじゃ、なかった


「なぁ、」

「ああ?」


「お父さんはなんで、俺を捨てたんだろう」



海の音、海の音、波の声



記憶は無い、俺は気づいたらあの家の子供だった




刑事がぷはあ、と、煙を吐いた

「おまえ、なぁ、


お父さん、もう、諦めろよ」







声にならない涙がこぼれた、
俺を18年間育てた赤の他人は
結局俺を愛して、くれなかった
俺は結局何がしてーのかわかんないまま

「なんできづかなかったんだろ」

こんな、俺は、ただ、あの人に、あの子供みたいに

お祭りいっしょに行きたかった

涙が痛い、そんなことを、初めて知った

馬鹿だからだろ。大きな手のひらで、撫でてくれた