キスは好きだった やさしい気持ちになれる、 好きな人の肩にもたれかけながら リファはうっとりと幸せに浸っていた 「レシ君…」 空には満月がかかっている、 草草がさわさわとなっていた ここはシバ、寒い国 「レシ君、もすこし…」 寒さに震えたふりをして、 リファはそっと、レシにくっついた ぞうきんがけをしていると、 いつも悪態が飛んできた これは過去の思い出だ (ラマナス様…) 思い出の中で、彼はいつも悪い顔をしている うれしそうな、意地悪そうな顔 「ぜんぜん片付いてないじゃないか、リファ」 そういってにやにやしている 何度もあった光景 「す、すいません、ごめんなさい、す、すぐに」 だけどこれ以上どうやれば ラマナス様のいう「片付いた」状態になるのか リファにはわからない 「ふん・・・、こっちへこい」 「ご、ごめんなさい、ごめんなさい」 この時点でリファはなきそうになっている 「だまれ!!! 5分でやれといっていたのに、おまえがのろまだからだろ!!! とっととこっちへこい!!!」 涙を必死で止めながら、震えながら、リファはラマナス様に近づく ラマナス様が強引に、その肩を抱いて、 このときだけは優しくささやく 「・・・・リファ、おまえ、さぼっていてなにかしていたんだろ、 なにか・・・・、人に言えないことを」 「し、してないです、してないです」 リファは震えを隠せない、またいやな時間がはじまる 何度経験しても終わらない、汚い時間 「うそをつくな・・・、俺にはみんなわかってんだから」 リファの「そこ」をそっとさすりながら、ラマナス様がいう 「なぁに、許してやるさ、わかってるな? そのためには・・・ほら」 なぜラマナス様を好きになったのだろう、 リファは孤児だった、 教会で養われていたのを、領主さまがひきとってくださったのだ ラマナス様も、最初はやさしかった、 花が好きだというリファに、カスミソウをくれたこともあった 気がついたらラマナス様の姿を追うようになっていた こすられると、いつも反応してしまう、 したくないのに。 こんなのは、いやなのに・・・ 「は・・・・あ・・・」 「うっくっくく・・・こんな固くして・・・ ほら、やってたんだろ、 そうじゃなきゃこうなるはずはない・・・」 「・・・・い・・・いや・・・」 「リファ」 突然怒り出したラマナス様が、リファの「そこ」を強く握った 「ぎゃっ」 「とっとと白状しろ!!おまえは薄汚いやつだ!!してたんだろ!!!!」 興奮しすぎたラマナス様は、顔を真っ赤にして、 高い声で叫ぶ、リファは怖くなる 「ご、ごめんなさい、ごめんなさい!!!」 「いいんだ、ほら、正直に言ってごらん、なにをしていたんだ」 ここでリファはいつも、覚悟してしまう、 覚悟、すべてを「白状」してしまう覚悟、 ラマナス様に従う覚悟 「し・・・していました」 真っ赤になったリファは、それでもつぶやくようにいう 「なにをしていたんだ」 「お、オナニーを・・・・」 こらえきれずに、涙が流れる、 ラマナス様が満面の笑みを浮かべる 「どうやってしていたんだ・・・」 「ず、ズボン脱いで・・・こ・・・こ」 「こ?」 「こすって・・・・」 「うぐっぐっぐ」 ラマナス様が笑う、この瞬間を、リファは何より嫌悪していた 一番嫌いなラマナス様だった 「思ったとおりだ、おまえは薄汚い人間だ、そうだろ」 「・・・はい」 「そんなことをこっそりやるぐらいだ、人前でもしたいんだろう」 「・・・・・・」 「したいんだろ!!」 「は、はい!!」 「見られたいんだろ?」 「はい・・・・」 「いいぞ・・・、遠慮するな、おれが見ていてやる、 やってみろ・・・」 「・・・・・・」 「こすれって言ってんだよ!!!」 リファは怒鳴られてなえてしまったものを、 もう一度こすりはじめる。 不快で、悲しい快楽がわきあがってくる。 ラマナス様のなめるような視線に、だんだん、本当に穢れた人間になるようだった 「・・・・た、たたないよう・・・」 「かせっ」 ラマナス様がリファのものを、乱暴にいじりはじめる 「・・・あっ・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・っ・・・・」 「気持ちいいか、リファ・・・」 甘い声でラマナス様がいう 「リファ・・・リファ・・・」 痛いのと、快楽と、ない交ぜになる ラマナス様のそこが、膨れ上がっているのをみて、 リファはまた、震えが湧き上がる ラマナス様への憎悪と、 愛情の、2つの感情が、リファには存在していた 「リファ・・・・」 ラマナス様がリファに口付けをする、 よだれまみれで、気持ちの悪い口付けだ。 そこまで思い出して、もう一度確かめるように リファは上を向いた、 空を見ていたレシが、リファを見る 「うん・・・?」 なぜか、少しだけ悲しさと、 そしてうれしさを感じながら、 リファはレシの唇に自分の唇を重ね合わせた レシがリファの腰に回した手に、少し力を入れる 「・・・・・・・」 ラマナス様とは違う、暖かい快楽が湧き上がるのに、 すべてを任せながら、リファはレシの肩に手を回す、 肌寒さが、レシの体温で温まっていく 「んぐ・・・ん」 ラマナス様のものは、苦くて虚ろな味がした ラマナス様はリファがそれを銜えると、 すぐにいってしまった、自分の顔にかけられるのも、 ラマナス様が頭を押さえるのも、 どれも窮屈で、悲しかった 「あ・・あ・・・りふぁ・・・はああ・・・」 ラマナス様が口の中を思う存分陵辱する その感触を、おかしなことだがリファは「楽しんで」いた。 ラマナス様に陵辱されるのは、 ひどく嫌なことだったが、 そこにはどこか、 「リファ」が「ラマナス様」をとりこにしているという感触があった ラマナス様がなすすべもなく、 リファの体をむさぼり、果てる時、 リファは一瞬、愛されていると誤解する 愛されているから、ラマナス様はこんなことをするのだと こんな風に夢中になっているのだと 果てた後の、ラマナス様の態度で、それはすぐにこなごなになるのだけれど 「お、おまえは・・・悪魔だ・・・」 ラマナス様が異様な瞳で、リファのべたべたの顔をねめつける 「悪魔だから・・・俺がこんなに・・・こんなことをするんだ・・・ 悪魔・・・俺が退治しなければ・・・・」 リファはその言葉におびえる、 でも逃げれない、ラマナス様にはいつだって逃げられなかった 「リファ・・は・・リファ・・」 その声に、リファは悲しくなった、胸をつかまれる思いがした ラマナス様が本当はどうリファを思っていたのかは知らない ただ、その声を聞くたびに、ラマナス様自身、どうしようもなかったのじゃないか、 自分を愛したくても、どうにもならなかったのじゃないかと、 絶望的な思いにとらわれた、 それはつまり、リファ自身が本当に悪魔だとか、汚い人間だとか そういうものだからではないかと、リファに思わせた 「リファアアああ」 慟哭のように叫びながら、ラマナス様がリファの首をしめる リファは苦しくて、必死でその手をはずそうともがく 「死ね・・・!!死ね!!!死ね!!!悪魔!!!悪魔!!!!」 「ああああ、ラマナス様、ラマナス様」 リファはなきながら許しをこう、 「許して、許して、殺さないで」 「悪魔がっ悪魔がっ」 「許して、許して、ラマナス様、ラマナス様」 思い出はいつでもここで終わる、 きっとその後、リファは気絶してしまっていたのだろう、 気がつくと、自分に与えられた小屋のベッドで、 薄い布団を一枚かけられて、裸で寝ていた いつもそうだった 首にはラマナス様の跡があった 頭ががんがんして、胸にぽっかり穴があいたように、何も考えられなかった 「れしくん・・・」 リファの唇をレシがなぞる そっとレシのものに手をはわすと、 レシはすでに大きくなっていた 「レシ君・・・好き・・・」 言うと、心が満たされた、 レシはそれ以上に自分を愛してくれていたから 「・・・・」 レシの手が、リファにはう 二人でいることが、うれしかった ラマナス様の金の腕輪を盗んだのは ラマナス様から逃げたかったのではない、 ただ、どうしようもない、危機感があった このままでは、きっと殺されてしまうと。 リファは怖かった、 あやまれるなら、すべてに謝りたかった リファは、ラマナスに同情していた リファ自身、気づいていなかったけれど。 草の上に押し倒される そっと、そっと レシがリファの唇に、何回もキスをする リファは心がたぷたぷいうような 深くて暖かい愛情に包まれながら、 レシの背中をなでる やさしくて大きな背中だ ここに背負われたときのことをふと思い出して リファは微笑んだ 「にやにやしちゃって」 そういうレシもにやにやしている 「だって・・・」 「リファ・・・かわいい・・・」 「レシくん・・・」 「なんか好きすぎて怖いや」 リファの着物を脱がせながら、レシが言う 「リファがずっといなくならないといいな」 「・・・いなくならないよ」 「絶対?」 「絶対」 無言でレシはリファにキスをした 「リファは幸せにならなきゃだめだよ」 「レシくんといると幸せだよ」 「本当?」 「本当」 レシがリファの上で泳ぐ リファは満たされながら、不思議な感覚に陥る レシが近くにいすぎて、どうしようもないぐらい近すぎて、 まるで一人でいるような 寂しくて暖かい感覚だ (ラマナス様) しあわせにおぼれながら、リファは満月に想った (貴方も幸せでありますように・・・) ウーズ国がチュカ国を攻め、 返り討ちにあって、崩壊したのをリファは知っている だけど、その中でラマナスと領主が捕らえられ、 ラマナスがチュカの精神病院に入院したのをリファは知らない カウセリングを受けながら、ラマナスが泣いているのをリファは知らない ラマナスもまた、ずっと、領主のゆがんだ愛情の元、虐待を受けていた 何十年もあとに、リファはラマナスに再び会う、 ラマナスの横には、その時リファの知らない人がいた リファはレシと自分のために、シチューを作ろうと考えていた ラマナスと気づかずに、その傍を通り過ぎた ラマナスはその時、すべて変わっていた リファに気づいたけれど、声をかけることはなかった ただ、泣いた、リファが幸せであることが分かって、泣いた ラマナスの横に立っていた人がそれを支えた でもそれは、何十年も先の話 「レシくん・・・・あ・・・・」 レシの手のひらに、自分のてのひらを合わせながら、 リファはレシの心に熔ける レシが夢中になっているのをそっとそっと抱きとめながら、 レシとひとつになっていく 「好き・・・・」 リファの瞳に、涙がにじんだ。 恥ずかしくて言えないので、心の中で、愛しているとつぶやいた。