大嫌い



ある日、夜起きたら、やつがしこってやがった。
俺の手を自分の性器に当てて―

「はあ、あ、あ、ああっあっ」

夢中になっているやつの唇からは、
よだれが垂れていた。
性器はどろどろに先走っていて、
やつの右手―俺の手を性器にあててしごいている右手
の闇蟲は、ぎぃぎぃと鳴っていた。
驚いてしまって、怒鳴ることも、詰ることもできなかった。

ただ、か細い声が出た。

「な……なに、してんだ?」

「っぐっあああっああっああっさ、まなっさまなっあっあっあっ
―っ」

びゅぐっびゅぐっとやつの性器から精液が飛び散った。
顔にそれがかかって、やっと意識が戻った。

やつをはねのけて、想いっきり遠ざかった。

「なにしやがるんだよ!!!!!?」

どんっっと壁に背中があたった。

「…………?」

やつはまだ夢心地らしい、
はあ、はあ、と荒い息をつきながら、
俺をぼんやりした目で眺めていた。

「あ……」

不意にやつの瞳に理性が戻った。
はっきり自分のしたことを認識したらしい、
急に顔が青ざめて、震えだした、

「ご、め…ごめ、ん、おれ、
おれ、手、見てたら、ち、ちんこ痛くなって、
や、闇蟲が……」

「…………近づくな」

「ごめ、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、
さまな、さまな、だって、だって、
お、おれ、おれ、おれ、だって、おれ、
わ、わけわかんなくなって、ご、ごめん、さ、さまな、おれ、おれ」

「……っ」

やつを押しのけて、ベッドから降りる。
コートを取って、とりあえず羽織って、玄関へ向かった。
やつが泣きながら謝っている声が聞こえた。

ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。

( 3 / 11 ページ) Prev < Top > Next