「こんな怪我をするようじゃ、殺し屋とは言えないんじゃないか?」

青年が笑いながら言う。

「黙って手当すればいいだろう、わざわざ皮肉を言わなければ気がすまないのか」

「すまないとも」

しばらく沈黙。
包帯を巻く音だけが響く。

「そんなに怒っているとそのうち禿げるぞ」

「怒ってない」

「怒ってる」

「怒ってない!」

「ガキ」

「ガキじゃない!!」

イライラと少年は青年にあずけていた腕を取り上げた。

「・・・・」

「・・・・」

しげしげと包帯を眺める少年。
青年はちょっと笑って、救急箱を閉めた。

「応急処置だからな、後は病院に行け」

「いかない。必要ない」

「それは身体が決めることだ。
君の意志が決める事じゃない」

「この身体は俺の身体だ。
俺の意志に従う」

「ばかだな君は」

「誰が馬鹿だ!!!」

怒りでトマトケチャップみたいになった少年に青年は笑いかけた。

出鼻をくじかれて、少年がむっとしたまま目をそらす。

「・・・皮肉を言われたく無かったら、もう怪我はしないことだ」

「うるさい」

「心配ばかりかける人間をなんて言うか知っているか?ガキって言うんだ」

「黙れ」

「・・・」

「・・・・」

「・・・・」

少年が怒りに燃えた目で青年を睨み付けた。

「本当に黙るな!!」

「・・・・どうして欲しいんだ」

「うるさい!自分で考えろ!!!」

「・・・・わかった」

青年は一度目を伏せて考えに微笑んだ後、少年の肩を掴んだ。

「!?」

「・・・」

驚いて避けようとする少年に無理矢理唇を合わせる。

そんなに驚いたのか、少年は抵抗しなかった。

「・・・」

「・・・・・・」

唇を放すと、少年がきっと自分を睨む。

「・・・お子さまには刺激が強かったかな?」

「死にたいのか」

唇を拭って少年は立ち上がった。


「いつか殺してやる」

「キスぐらいで殺されちゃ叶わないな」

「・・・死ね」


太陽が、地に沈もうとしていた。
窓から流れる風が涼しい。

青年は少年の立ち去った後を、少し寂しげに眺めていた。