殿下

新春謹んでお慶び申し上げます
皆様のご多幸を

聞いているんですか、殿下、
ちょっと、何を見ているんですか

笹井が筆を滑らせながら、ちらちらと私を見上げ、
叱咤する

「梅が咲いている」

梅、って、殿下!
お逃げにならないでください、
年賀の挨拶は

どーのこーのと笹井がうるさい

可愛い唇がぴーよぴーよと喚いている
先の夜まで私の名を読んでいた唇だ

「梅はお前に似ている」

あのですね、殿下、これが終わらないとですね

「私の好きな花だ」

急に笹井が黙り込む、見るとハトが豆鉄砲を食らったような顔をして、
真っ赤になっていた

ば、馬鹿いわないで、さっさと

「どうした、顔が赤いぞ」

後ろに回りながら言う

はやく―…、年賀を

焦っているのか言葉が回っていない
笑ってしまう

覆いかぶさって手に手をとると、
全身がぎゅうっと緊張していた

「笹…、もう一回、したい」

笹の耳は赤く熱を持ち、咥えるとふるふる震えていた