優しい拒絶

どこか遠くを見つめながら、

すきだよ、と、微かに呟く

その次に

「でもさ」

と続くのを、胸の中で聞いていた

「俺たちは、」



吐息を呑んで、その次の言葉が出ないらしい

笑いながら空を見上げたら、
満月が夕焼けに取り残されていた

こんな所にいるのが酷く不本意らしい

座っていた、鉄棒が、お尻で温められている


僕が女だったらな、と、
言おうとして、


つまった、目じりが温かくなったので、下を向いた、ひりひりする



「男だと、いけない?」


代わりに出たのはそんな言葉で。


いつも
いつだって
好きになるのは
男の人だった
その度に
とても
優しく

優しく

てのひらを放された




十鳥、彼の右耳が、うすくれないに染まっている
唇がかすかにひらき、あのさ、と呟いた





考え深い瞳が好きで、
それを見ているだけで幸せなのに

言わなきゃいいのに
言わないで
見ていればいいのに
こんなに
絶望するまで
好きにならなきゃいいのに、さ

無理やり作った微笑みに
あったかぁい涙が落ちる、

彼は今も考えながら、
少し僕を見てから


「戦う覚悟、あん?」


「あ?」





「俺は、あ、あ、あんた、と、なら


た、戦っても、いいけど」


彼の手のひらが動いて
つないでいたてのひらを
もう一度、抱きしめた

上ずった声に、わけも分からず、
どうすることも出来ず、
呆然と
涙が、落ちる


「だって好きだ」