流動

そ知らぬ顔で微笑み
そ知らぬ顔で、嘘をつくんだね

笑って言うと、
貴方はやっぱり悲しげにうつむいた、

もう、帰るよ

待ってよ

帰るよ

待てよ

乱暴に腕を掴むから、顔をしかめると、あ、という顔をして、すぐに放した

土台無理な話なんだよ
君と僕が「恋」なんて

笑ってしまう
へそで茶を沸かす

彼のとがった耳がすうっと、赤くなる、目元が緩み、
笑うような、なくような、悲しい顔になる

きみは、ぼくが、きらいなの


凍える声で言った


眠っているときにそっと近づいて、
僕にキスした悪魔さん
何年前から恋してた?
何年前から愛してた?

僕の羽を、撫でる手つきが、おかしかった。

無理なんだよ

答えずに言うと、やだ、と言われた


やだ、じゃあ、悪魔やめる

やめるから、やめる、もう、やめる

言ってる傍からぽろぽろ泣き出す、やめる、やめる

胸にぎゅっとお湯みたいな温かさが満ちて、
思わず抱きしめていた、抱きしめて、撫でていた
柔らかな黒髪

肌の色も
目の色も
翼だって違うのに


唇の温かさと、柔らかさは
癖になりそうな優しい気持ち


「なんでこんなに愛しちゃったんだか」

離れてから言うと、人の首筋に噛み付きながら、きゃっきゃと笑った

また騙された
そうだ、
いつだってそうだ、

泣いた顔して笑ってんだ

僕が離れないのを笑ってんだ

それすら愛しくてたまらないのを




嬉しがってんだ