号泣

泣いて、泣いて、泣いて来た気がする。

気づいたら闇雲に歩いてきた人生は
どこかしら欠けたまま、
恋人を、作っていた。

恋人は、冷たい人で
冷たく見える人で

今なお、私の横にいるのに
どこか離れた遠くにいるようだ。

缶コーヒーを口に持っていき、淡い吐息が浮き上がる。

 好かれることのない人生でした
 嫌われることは多々ありました
 でもそれがどうしたって言うんでしょう

 関係ないんです、結局は

無言で手を重ねると、すこしみじろきして、何も言わなかった

別れるんだろうか


ふと、思った

 涙はもう出ません
 あんまり泣きすぎたからでしょうか
 なんだか、泣いても無駄だと知りすぎた所為でしょうか

 人なんて、信用する方が愚かしいのです

 誰も、敵なんです

「別れる?」

声にだして言ってみた、恋人がじっと私を見た、
にらむように

微笑んで見せると、ただそれをじっと見ていた



空に鳥が飛んでる
灰色の空だ、
とても枯れた枝が、
天を貫き、雲が流れていく、彼がいきなり叫んだ

「あのさー、おれ、おまえのこと愛してんだけど」



「はあ」


「なんでそうなわけ?なんでその、

信用してないの?あのさーも、
なに、おまえ俺のこと嫌いなわけ?」

早口でまくしたてて、急に黙った、笑ってみていたら、


「おまえ、言っても分かんないかも知れないけれどさ、
今日誕生日だし、プレゼントしても笑ってるだけで、
あんまり嬉しくなかったのかもしれないけれどさ、

俺は


お前が生まれて、来たの





嬉しいんだ、よ」



ありがとうって、誰かに、感謝したいぐらい










なんだか視界がぼやけてる、嗚咽がついて出ている、なんでだろう?彼が呆然としている、誰かに


生きていていいと言われたかった

誰かに、


生まれたことを愛されたかった



なんで泣いているのに



こんなに温かなのだろう