なんで、人を愛するの?

ゆきが降り続く夜空の中を、星が何故か光っている。

肉まんをほうばりながら、あの人が言う

オリオン座、さそり座、の物語を知っていますか。オリオンはさそりから逃げているのです。でもさそりはオリオンを刺そうとしているのでしょうか?

肉まんの湯気がふんわり夜空に漂う

オリオンはさそりに刺されて死んだのです、でもさそりはオリオンを刺したくて刺したのでしょうか、アルマニオン

不意に私の名前を呼ぶから、じっと見ていたのが―見とれていたのが分かったのかと、少し慌てる

アルマニオン、貴方は何故、

そこから先は繋がらない、言いたいことは、けれど、分かった

わたしはたいてい弱者だった、
とても弱い立場だった、
学校では大変酷いいじめにあっていた、無視と言う―
家でも、いじめにあっていた、無視と言う―
何処に居ても、私は、いらない人間だった

なのに何故

先生、先生はさそりに何を幻想を持っているのでしょう

微笑むと先生は戸惑ったように目をそらした

僕の憎しみを知っている人

先生からもらった指輪を少したゆんで指で転がし、まっすぐに上を見た、冬の星座が光っていた、先生

この、星空を写真に撮りたいものです

何故ですか

だって、とても綺麗です、とても優しいです

…何故
写真を撮るのですか

憎しみが消えるからです

驚いた顔をしないで。私の写真はそんなに、綺麗でしょうか、世間で言われてもよく分からないんです、でも、

撮りたかったんです



見せたかったんです


さんざめく星々は柔らかな光を投げかけ、こんなに寒いのに、どこか温かだった、私は、願っていた、


憎んで憎んで憎んだ先に、


私は願っていた


せんせい、先生、闇にどれ程まみれている人がいるでしょう
闇で光を見失うのはどれ程辛いでしょう

せんせい

せんせい、私に貴方がいたように、




闇に、星屑ほどの光があることを


知ってほしかったんです





先生がぽつりと言葉を出した、

声にもならず、消えていった


おごっているのかも知れない、
ただの救いにもなれないだろう、
それでもいいのだ、
ただ、


この闇が光であることを


誰かに知ってほしかった