玉
>>
絵
> 彼
彼
雪が見えた。
だから、
目尻が熱くなったんだ。
セキハは病もちで、
どんな病かと言うと
人と喋るときにどうしてもどもってしまうという
笑われそうな病持ちだった。
僕といるときぐらい、喋ったら?
だ、だ、だ、だって、に、に、にいちゃん
おどおどと顔を赤くしながら手をひねくりまわす。
セキハの耳の形を見ながら、
それを触りたいと想った。
か、か、かあ、かあ、さんが、
しゃ、しゃべ、しゃべる、な、て
母さん、もういないじゃん
で、で、でも、お、お、おれ、う、うざ、
うざくないよ
セキハ、と唇に声を乗せると、少し甘い気がした。
セキハの耳がよっぽど赤くなる、僕をちらりと見て、また目を伏せた
に、にいちゃん、は、しゃべ、しゃべって、て、い、いいよ、
お、おれ、に、にいちゃ、の、こえ、す、き
はぁはぁと息を呑む
形のいい唇が、微かにふるえていて、
それを触りたいと想った
セキハ?
…
無言で僕を見つめる目が、熱く潤んでいた、
さわっていい?
え、あ
こたえを聞く前に、机に乗り出して、まず耳から触った、セキハがびくっとした
あ、そか、
セキハから唇をはずすと、セキハはこほ、と咳き込んで、ふるえていた
窓を見ると、雪が降っていた
SS付き
2005-12-23
22:02:10
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だから、
目尻が熱くなったんだ。
セキハは病もちで、
どんな病かと言うと
人と喋るときにどうしてもどもってしまうという
笑われそうな病持ちだった。
僕といるときぐらい、喋ったら?
だ、だ、だ、だって、に、に、にいちゃん
おどおどと顔を赤くしながら手をひねくりまわす。
セキハの耳の形を見ながら、
それを触りたいと想った。
か、か、かあ、かあ、さんが、
しゃ、しゃべ、しゃべる、な、て
母さん、もういないじゃん
で、で、でも、お、お、おれ、う、うざ、
うざくないよ
セキハ、と唇に声を乗せると、少し甘い気がした。
セキハの耳がよっぽど赤くなる、僕をちらりと見て、また目を伏せた
に、にいちゃん、は、しゃべ、しゃべって、て、い、いいよ、
お、おれ、に、にいちゃ、の、こえ、す、き
はぁはぁと息を呑む
形のいい唇が、微かにふるえていて、
それを触りたいと想った
セキハ?
…
無言で僕を見つめる目が、熱く潤んでいた、
さわっていい?
え、あ
こたえを聞く前に、机に乗り出して、まず耳から触った、セキハがびくっとした
あ、そか、
セキハから唇をはずすと、セキハはこほ、と咳き込んで、ふるえていた
窓を見ると、雪が降っていた