竹毒

嵐の匂いがした

竹やぶの中、赤い花がちらほらと咲いている。
血塗れたような、ぼってりとした花弁に、雨がすう、と、降注いでいた。

「刀を」

一つ告げると、忠芯が、すっと横にならい、刀を差し出す
「ん」

微笑んで見せると心ばかりか、頬を朱に染める。
それを見ると、何故か、和んだ。

「右竹に宿っているな」

見上げると、霧雨の中、毒は黒光に瞬いていた。
かなりぐずりと根太い毒だ。

忠芯が私の衣服を脱がせる。
終わる頃には返り血で上半身はずっぷりぬれる。
衣服を脱ぐ、というのを告げると、忠芯は嫌がっていた、
しかし、でも、いけません、やはり、
何度も拒絶の言葉を口に、なんとか私をなだめようとした。
あれはいくばくかの頃だったか。確か私が十にも満たない頃だ。

今ではもう、私に逆らうことはしない。

「忠芯、これが終わったら、約束だ」

右竹の上をにらみつけたまま、刀を据える。

はい、と、忠芯が凛とした声を出した。ふるえ、私を惑わせてはいけない、
そう想っているのだろう

「やらせろよ」

わざと下品な声と言葉でにやりと笑いかける、と、す、と朱に染まり、
それでもけなげに、はい、と答えた。目が興奮したのか、

少しぬれている。心なしか、腰のあたりが盛り上がっている。

可愛がってやる。今夜いっぱい、もてあそんでやろう。

唇を舐め、もう一度右竹に刀を据える。



竹以外見えなくなる。


細い糸のように。


竹がすうっと、意識を支配する。


毒なのか。


竹なのか。



毒なのか。



花なのか。







一瞬の光の後、竹の倒れる音、毒が飛び散り、血が降注ぐ。




私は勃起していた。



竹に宿った毒。竹はいつでも苦しんでいる。
私は毒を取り除くために生まれた。

忠芯。お前に愛されるなら、
そんな人生も、悪くない。