くちゅ……くちゅ、と、
カイチの舌が僕の舌ぺろぺろ舐めてる。
ちらっとカメラの方を見ると、
カイチがきつく僕を抱きしめた。
「見ちゃだめ」
背中を撫でながら、小さな声でささやく。

学園祭の、映像研究部の、今年の課題。

―……ゲイとビアンの四関係の映画

またカイチがキスする、
断ったんだ、ほんとは、今でも断りたい、
だってカイチ、僕のラブレター、
読んだの?あれ本気だったんだよ、
なのに返事もせずに、映画に出てくれって。

オッケーしたのは、情けない、希望にすがりついたからだ。
―カイチも、乗り気だったよ
誘いに来た女の子、
カイチの彼女だって噂の女の子にそう言われて。

カイチのキスに、目がうるむ。
唇が熱くて、熱くて。
自分から舌をそっと絡めると、
それをカイチがちゅうっと吸った。
「……っん」
「好きだよ……」
カイチがささやく。

情けない、股間がじんわり熱くなる。
顔がほてる。
そっとカイチが、腰をひきよせた。
「感じちゃってる?」
少し笑いながら、小さな声でまたささやいた。
かあっと血がのぼって、涙がじんわりにじんだ。

カイチ、どういうつもりなんだよ、
僕がホモだから、からかってるのか?

いっそここでカイチを突き飛ばして、
逃げてしまおうか、ふざけんなよと、怒鳴りつけようか。
考えていたら、カイチがまたキスした。
何回キスするんだよ、台本には「キス」としか書いてなかったけれど。
ハイカーット
監督が叫んだ。
びくっとして、思わずカイチを突き飛ばしていた。
カイチがぽかんと僕を見る。
「ご、ごめん」
謝ると
「いいよ……
でもいい映画になるね、
ほんとの両想いが出るんだもんね」
そういって微笑みながら僕を引き寄せた。
今度は僕がぽかんとする番だった。
キスされながら、ほんとに呆然と、カイチを感じてた。