それちょーだい

なんとなくねだった。
サユは少し高い石段に上って、手を広げてバランスをとってる。
頭に、変なぼうしがのっかってる。

ん?

少し困ったように笑いながら、サユが振り返った。
ぼうしほしいの?

ちょーだい。

頭を指差して、つきだす

はやくぅ。

なんだよ、これたかいんだぞ。

ぶつぶつ言いながら、それでもサユはぼうしを僕のあんまにのせて
ぽんぽんとしてくれた

サユがいままでかぶっていた、あったかいぼうし

うれしー

きゃっきゃいいながらぐるぐる回ると、サユがぽんっと飛び降りて、
ぼくをはっしとつかみ抱きしめた、はっし。

くるしー。

ナナー、ナーナ

笑って見上げると、サユは思いのほか真剣な顔してた

ぼうしあげたから……
……
……ちゅう……したいなぁーーーーーーーなんて、なぁ
はは、はは

ちょっと焦った笑顔でサユが僕をはなして
またぽんっと石段に上る

ぼくおとこだよ?

確かめると、憮然とした顔で首を振った

ごめん、忘れて、どうかしていました
はい、忘れましょう


……

……

なんだか横顔が焦ったまま、サユがさっさと歩く
慌ててぼうしを押さえながらついていく

サユ

……

サーユ、おりてよぉ

……あ、ああ、ごめん、
石段高いのいや?


なにバカなこと言ってんだこの人は


だってそんな高いと、キスできないじゃん


サユがちょっと、呆然とした顔で僕を見た