夕日が光ってる。
きらきら。
きらきら。

片手と片手でつないだ、
ぬくもりが寒さを緩和していく。
ゆっくり。

「女装、まだしろって?」
「ん……」

いつもはしゃべりすぎるほど
おしゃべりなのに
彼と会うと、
無口になってしまう、
何もはなせない、
胸がいっぱいで。

そっと口づけする
ああ、これだけでいいと思う、
柔らかな唇。

「女装してもおまえのが
背、高いのな」

笑う、よくわからない言葉を言いながら。

「背は縮まないよ」
「そうだな」

僕は「いのち」を狙われている。
彼はガードマンに雇われた。
うちの「ざいさん」を狙う人々。
跡継ぎだとばれないために
女装して……。

彼はどう思っているんだろう、
恋人のふりをしろなんて
そう言われて、男とキスさせられて
男と、手、つながれて。

ホテルいかされて
(もちろんセックスはしないけれど)

どう思ってる?
そんな怖いこと、決して聞けない。
どう、思ってる……。

彼からのキス。
甘く噛まれて、愛しさに胸が満ちる。
あたたかな吐息と
ぬくもり。

抱きしめられて、
ぎゅううってされて、
ああ、愛しさで胸がつぶれそうだ。

初めてあった時から
初めて、出会った時から

「なぁ……
もうすぐ、俺、お役目ごめんだな」

この世でいちばん怖い台詞を
彼が口にのせた、
ぎゅうっと心臓が縮む、
痛みに涙がにじむ。

そうだ。もうすぐ跡継ぎは完成する。
約束は保護される。
そしたら、そしたら、

彼は、いなくなる。
女装もしなくなる。
この逢瀬も

「そしたら、男の格好してこいよ。
お前、女装も似合ってるけどさ」
なんだか照れたように笑うから、
「また、会えるの?」
そう聞いたら、

ん……なに言ってんだ?
恋人だろ。

そんな風に言われて、

僕は彼の胸にほほをつけて、
そっと嗚咽を隠した

これだけで泣いてしまう、
情けない。

彼は僕を抱きしめながら、
なくなんてばかだ、おまえさんは。

とか言いながら、なでなでしてくれた。

恋人だろ……。

確かめるように口から伝えられた言葉に、

うん、とうなづいた。