殴られた頬を
押さえもせず、
見上げると
怒りに顔を紅潮させて
震えていた、

竹。

「本気で言ってるの」

怒りのあまり静かな声。

別れたい。
もう嫌い。
大嫌い。
反吐が出る、
あんたの声。

挑発にあっさりのって
冷静なくせに
単純で、猪突猛進で

「本気だよ」

精一杯笑うと、
ひくっと、ほほが震えた



【こじき】なんて
すきになんかなれない




竹。



「殴るなんて最低だ
やっぱり好きなれない
別れたい」

竹が震える、
その赤い頬に、
透明なしずくが落ちた、

ずきっとした。


ここまで、自分がうろたえるとは
想わなかった。


泣かないでって

泣かないで、泣かないで、
違う、
本当は違う
ごめん
ごめん、違う
違う
ちがう
ちがう

言いたかった、
叫びたかった

僕だってあんたを愛したいよぉ

「泣くなんて最低だ、
やっぱり好きになれない」

笑おうとしたら、いきなり
ばーっと涙があふれた
声が震えた
胸をぎゅっと抑えて

おちつけ、おちついて
うまくやらなきゃ
ばれないように
ばれちゃうよ

なんとか声を振り絞った

竹、あのね、

「お父さんにお金もらっている
【こじき】なんて最低だ」

あのね

「どうせ好かれてもいないくせに」

あのね

「追い出されているくせに」

竹が震える。
ああ、肩が戸惑っている。
僕の言葉を信じていいか
戸惑っている、
ああ、

竹は頭がよいから
ばれてしまう

「お前なんかだいっきらいだ」







君が竹と別れてくれたら
竹を家に呼び戻しても良いよ

笑いながら、彼は言ってくれた
信じると、僕は言った

竹。


「お前なんか





息が詰まるほど、抱きしめられた


「なにかんがえてんだよぉ」

泣き声で

「おま、おまえ、また、
なんか言われたんだろ、
あいつになんか言われたんだろ」

違う、違う、違う、違うちがう
ちがうと言いたかった、
ちがう、ちがう、ちがう、
ちがう、
ちがう、

声が出なかった

「お、おれは、俺は、
お前をなくす方がいやだよぉ」

竹がおんおん泣く、
何もいえなくて
なにもできなくて

ただ黙っていた、
ずっと。

涙だけ、

流れた

竹、




たけ


しあわせは
どうやったら
なれるの