タツノオトシゴ

雪が降る。

雪が降る。

知ってる、雪って、雨なんだぜぇ。

タツノオトシゴが嬉しそうにはしゃいだ、
あめ、あめ。

雪は雪だろう、
馬鹿だな、

そう言うとぷクーっと膨れる

でも雨なんだもの

雨なのか

なんだよぅ

なんだよぅ

可愛い可愛いって、撫でたら、
いきなりタツはその手を振り払って走り出した。

おーい、タツ。

なんだよぅ、兄ちゃんの馬鹿っ

おーい、危ないぞ。

ほら、と見ているうちに、ほあ、とタツはひっころんだ
慌てて駆け寄る

けがしたか?へいきか?

いちゃい

足から、血が垂れている

あー、も、おまえなー

ハンカチでそれをおさえると、泣きそうな目をしてハンカチを見ていた

兄ちゃんいつもおれんこといじめて

俺の所為じゃないだろう

兄ちゃんの所為だもの

自分の所為だろう

やれやれ、言いながら、いやがるタツを背負うと、
いきなり静かになってほっぺを背中にひっつける

兄ちゃん、タツはもう大人ですよ

おしめもとれてないような…

大人なの!

どんどん、と背中を叩く

痛いよ

大人なのに・・・

タツがぎゅうっと背中に張り付いた

分かってる。タツは、俺にちゅうされたいんだ。
大人とか、大人じゃないとか、タツの言いたいこと、
俺と対等になりたいんだ。

「タツ…?」

声をかけるとしん、としている。
ふくれっつらで、きっと心音を聞いている。

ねぇ。

ねぇ、タツ。

タツ。でもねぇ、兄ちゃん、もう少し、このままがいい
おまえが子供のまんまがいい
おまえのえがおや、すねた顔が、


兄ちゃん、すげー、さ


幸せなんだよ。