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狐の子
「私が狐の子なのは承知だ」
笑いながら里屋が言う
ちょうちんを持った手の、青たんこぶが、
先ほどまで男を殴っていたのだと、
雄弁に語る。
「お前も私が怖いのだろう」
「さてな、可愛いとは想うがな」
「…」
里屋の目がすうっと、細められる、
知ってる。
こういう目をするとき、
里屋はほんとうは、泣きたいのだ
泣きたいのに、泣けないのだ
母も父も分からない里屋、どれほどの
どれほどの寂しさを抱えているんだろうか
抱きしめたい、と、湧き上がる想いを、無理やりかき消した。
「里屋、泣きたかったら泣いていいぞ」
「誰が」
振り返った里屋に微笑んで見せた、
いっそ、誰より里屋に伝えたい
義弟でさえなければ、
里屋の目がすう、と大きくなって、涙がぽつりとあふれた
「ほら、泣き虫」
声を殺してなく里屋を、
抱きしめれば柔らかく、
強く湧き上がる劣情を、こらえた
SS付き
2006-01-07
17:35:18
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笑いながら里屋が言う
ちょうちんを持った手の、青たんこぶが、
先ほどまで男を殴っていたのだと、
雄弁に語る。
「お前も私が怖いのだろう」
「さてな、可愛いとは想うがな」
「…」
里屋の目がすうっと、細められる、
知ってる。
こういう目をするとき、
里屋はほんとうは、泣きたいのだ
泣きたいのに、泣けないのだ
母も父も分からない里屋、どれほどの
どれほどの寂しさを抱えているんだろうか
抱きしめたい、と、湧き上がる想いを、無理やりかき消した。
「里屋、泣きたかったら泣いていいぞ」
「誰が」
振り返った里屋に微笑んで見せた、
いっそ、誰より里屋に伝えたい
義弟でさえなければ、
里屋の目がすう、と大きくなって、涙がぽつりとあふれた
「ほら、泣き虫」
声を殺してなく里屋を、
抱きしめれば柔らかく、
強く湧き上がる劣情を、こらえた