春の待ち人

はじまり

ゆきのひに、すてられたカーヤ
まちの、きらわれもの
だれもがそのなを、さげずんでよぶ

:

クリスマスの日
ちらちらと降り始めた雪に、カーヤは寒そうに肩をすくめた
早く家に帰ろう、
家に帰っても、ひとりぼっちだけど。

なんとか買い求めた今日の夕飯を、確かめるように、
カーヤは胸に抱きしめる
このごろは、街での買い物が、難しくなってきている
カーヤの悪名が、だんだん浸透していくように。

カーヤの大事な人の顔が、一瞬脳裏に浮かぶ
それと、「あの人」
カーヤの初恋の人、
この雪の日、去年までは三人で過ごしていた
彼らは今、何をしているのだろうか

舞い散る雪をじっと見つめて、
カーヤは去来した寂しさに、唇を噛み締めた
彼らが、幸せでいるなら、
俺はどんな境遇に陥ってもいい

その目の先を、

「あの人」が、

険しい顔をしながら、
街を早足で行過ぎていった


カーヤはとっさに建物の影に隠れた。
こみ上げて来た想いに、
目頭がじんじんする

少年、少女達が、あの人の周りに集まり、
施しを願う。
そうだ、いつも、あの人の周りには人が集う
あの頃からそうだった。
その時ばかりは笑みを浮かべて、あの人が応じる。
カーヤの目の前で、あの人は彼らにかすかに接吻をした
カーヤはぎょっとなった
接吻、カーヤは一度もされたことがない
ずっとしたいと願っていたものだ

あの人は、
カーヤを捨て、
カーヤの大事な人を牢獄にいれた
それからずっと、カーヤを憎んでいる。

見たくないのに、目があの人の動きを追っていく
あの人が少年を抱きしめて、ほおずりした
精一杯愛しそうに

カーヤは逃げ出した。
荷物が音を立てた、
吐息が、白く染まる。



家に帰ってからも、
あの人の優しげな微笑みが消えなかった
カーヤもあんな風に、愛されてみたい
もう一度、もう一度だけでいい。
あの人に。今は牢獄にいる、カーヤの大事な人に。

何度か部屋を行き来し、カーヤは悩み、
窓の外を雪が積もっていく

その雪が夕日に照らされ、ゆっくり闇に染まる頃、
やっとカーヤは電話を手にした
前から、かけよう、かけようと思っていたところがある
やっと決心することができた

色人、売夫なら、カーヤをあんな風に、愛してくれるかもしれない

台所に置かれた食材が、少しの音を立てて、崩れた

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