大嫌い



戻ると、しじまは寝室でぼおっとしていた。
茫然自失。そんな言葉がふと浮かんだ。

「なにしてんだよ……」

ふらふらと俺を見る。

「かっ」

急にしじまの目に涙が浮かんだ、
ぼろぼろと落ちる。

「か、かえって、こな、いか、と」

ぼろぼろ。ぼろぼろ。
なんかこっちまで悲しくなってくる。

「帰ってきたじゃねーか。もう。泣くなよ」

「ご、めんな、さい、俺」

「いいよ。あのさ、もう一回聞くけれど、お前、
俺のこと嫌いなんだよな?」

「うんっうんっ」

泣きじゃくりながら、しじまが必死で言う。

「だい、きらいなの、すきにならないっでっ
いっしょに、いてっ、お、おねがいっ」

「…………わかったよ」

わかった、しじま。
おまえ、なんでか知らないけど、大嫌いを好きの意味で使ってるんだな。
誰にそう教えられたのか、知らないけど。

「寝よう」

「……う、うん、も、絶対近づかない、から、
お、おれ、あっちで寝るから。」

そう言って、そばにあるソファをさした。
アホだ。

「そうじゃねーよ」

しじまの手をひっぱる。しじまがはてな、と言う顔をする。
それに無理矢理口づけた。



その夜、しじまを抱いた。
しじまは何度も熱い液体を飛び散らせた。
ずっとたまっていたらしい。
最後の方はキスしただけでいった。

とても俺が好きらしい、

何度も、何度も、俺のことを「嫌い」と言った。

いく時は俺にしがみついて、俺の名前をきつく言った。
嫌い、きらい、きらい。さまな、さまな。

しじまの声が、こだまする。


さて。どうするべきか。


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