リーちゃん

ゆるちゃん、という彼の顔が好きだった
ゆるちゃん
ちょっとだけ微笑んで
ちょっとだけ愛しそうに
そう、呟くんだ

「糸伊 ゆう」というのが僕の名前だけど
彼は必ず「ゆるちゃん」と言った
彼の名前はリキで、上の名前はないんだそうだ
りーちゃんと僕は呼んでいた

小さな引っかき傷のあるうでを
いつもハンカチで巻いていた
何かを隠すように。
そして引きつった笑みを
いつも、浮かべていた。

( 0 / 17 ページ) > Next