許されるなら―光根―



荷物を持って、ふと、城を振り返る。
全て消えた。光根も。和衛も。父も。

やっと消えてくれた。

荷物がやけに重いな
何も入っていないはずなのに。

和衛、追って来るかな

「はは」

ふと浮かんだ自分の馬鹿げた考えに笑ってしまった
追うわけない。


思い返していた、あの時、あのとき

 かずえはちちをなぐった、なきながら
 ちちをなぐった
 
 あんた、あんたそれでもッ
 
 いいたいことは、わかった
 
 おれはぼうぜんとしていた
 
 ちちはかずえをだきしめ、どうした?と
 聞いた


「クルッ」

いきなり、和衛の声がした
幻聴か?

いきなり、手をつかまれた。

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