許されるなら―光根―



沼のほとりで、沼のけむりが空に消えていく
和衛は俺の背中にもたれかかりながら、
俺が泣き止むのを待っていた
ひっくひっくと、泣き止むのを、待っていた。

 しってたよ


小さく、和衛の呟き


 しってたよ


殺したがっているのも
愛されたがっているのも
憎んでいるのも

 しってたよ

なぁ、クル

お前が、どれ程俺を嫌おうが
お前が、どれ程俺を憎もうが

俺は、

俺はお前を好きでいるぞ

愛しているぞ



おれは、おまえを、あいしてる




クル、俺の目を見ろよ。
俺の声を聞いてくれよ。

お前の憎しみぐらい、

俺は、俺は、そんなの、
いいんだよ

―…憎んでいいんだよう

嫌おうが、嫉妬しようが、憎もうが、


 俺はお前を好きでいるから
 
 俺はお前を愛しているから



クル。


お前の、憎しみや、嫉妬は

あっていい。


あって、いいんだよ。


自分を責めるな。




なぁ、和衛なんで俺、
泣けなかったんだろう
なんで、お前に好きといわれたぐらいで
こんなビービー

ビービ―、泣いちまったんだろう

和衛の声が、優しくて

優しくて

お前が、愛されたいってのは




持ってていいから

持ってていいから


だから。


だから。

自分を責めないで。

自分を、好きになれ


「お前いい奴だよ」


―神様

―かみさま…、俺はなんもいらない

なんもいらない

和衛が、好きと言ってくれた、だから、なんもいらない

だから


どれ程辛く苦しい目にあっても
どれ程悲しく嫌になる目にあっても


愛する力を俺に下さい


神様、

どうか、


願いが叶うなら



光根のように。



どれ程嫌われても憎まれても愛されなくても見捨てられてもどれ程、悲しくても











人を、愛せる力が、欲しい


和衛を愛せる、


自分でいたい。そうだ。

ずっと、そうなりたかった。
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