許されるなら―光根―



「おいッ和衛ッおい」

血だらけの彼を揺さぶった、心臓が壊れるほど縮み上がり、
ばくばく汗が流れた

手のひらに真っ赤な生暖かい血液が垂れ、俺は取り乱した

「いて…叫ぶなよ」

彼が、微かに息をする

「今、いまな、今、人よんだから、
よんだから」

握りつぶすほど強く握った連絡甲をぶんぶん振り回す、
汗で滑りそうだ

「いてぇ…死ぬ」

「死ぬなッ今よんだから、よんだからッおいッおい和衛っなぁ、なぁ」

なきたくて、かなしくて

「うん」

変な顔するなよ。和衛が無理に笑う。

直後だった。和衛が王の守り人になってから

 ぱーてぃすっから

無邪気な顔で和衛は言った
それを見て一抹の不安を覚えた、
和衛が、あんまり嬉しがるから

あんまり、うれしがるから―黒い闇が、湧き上がるほど


和衛の恋人が、

たった今、

彼を切り捨てて逃げた、金と、彼の剣を持って
俺はそれを偶然見ていた

 闇のような地下道、俺の地下室へ続く―あの暗い闇のような
 彼らはそこで談笑して、彼は俺にむかって手を振った
 彼の恋人は深く沈んだ顔をしていた
 
 急に、闇が光った
 
 彼の恋人の剣が、ひかった

悲鳴は誰があげたのだろう、


俺だったのだろうか

彼の血しぶきを、微かに被った

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