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2005
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許されるなら―光根―
闇の中にいた…
かすかに、和衛の声、聞き覚えのある、柔らかな
「くる?」
ああ
ねぇ
俺、お前に、そう呼ばれるの
すげー・・・
すげーさ
「おい、クル」
「ん……、ああ」
闇の中にいた
深い闇が、目の前に垂れている
光根を見ていた
光根は、俺のだいじなものだった
てをのばすと
光根が、
ぼんやりと目をしばたく、
―あれ、光根は
はっと気づいた―和衛
真横で優しく俺のほほを撫でていた
なにやってんだ
「へ、平気かッ?胸痛んでないか?」
おたおたと見っとも無く慌てると、
和衛がくすっと笑った
「まだ、いたむけれどナ。平気」
うんしょ、とベッドの上に起き上がる
「馬鹿ッ寝てろッ」
叫んでドアに走り寄る、
和衛が叫んだ
「やめろよ、人呼ぶな」
「だって皆心配してる、
おま、馬鹿、おまえ、言ってる場合か」
静止も聞かず、ドアを開ける
ゆっくり、日が昇ってきた。
体を拭いてもらった和衛が、ぼんやりまどろんでいる。
その頬をちらりと見た後、また太陽を見上げると、
和衛がぽつり
「窓開けといて」
「虫、入るぞ」
「網戸」
「ん」
がらがらと網戸をひく、
さあ、っと風が入った。
太陽の匂いがする。
不意に、闇が恋しくなった―俺のいる場所は此処じゃない。
あの、地下、闇の、場所
光根が恋しい
「あいつ…見つかってないのか」
「…皆追ってる」
光根が恋しい
王は、「追うな」と言った
あいつの好きにさせてやれ、
俺があいつなら、追いたくない
俺は、追うだろうな。
和衛を裏切ったんだ、
許せるはずが無い
王宮に居る誰もが和衛を考え、
和衛のために、何かをしようとしている。
そう告げると、和衛はふうん、と言った。
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2005-07-30
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闇の中にいた…
かすかに、和衛の声、聞き覚えのある、柔らかな
「くる?」
ああ
ねぇ
俺、お前に、そう呼ばれるの
すげー・・・
すげーさ
「おい、クル」
「ん……、ああ」
闇の中にいた
深い闇が、目の前に垂れている
光根を見ていた
光根は、俺のだいじなものだった
てをのばすと
光根が、
ぼんやりと目をしばたく、
―あれ、光根は
はっと気づいた―和衛
真横で優しく俺のほほを撫でていた
なにやってんだ
「へ、平気かッ?胸痛んでないか?」
おたおたと見っとも無く慌てると、
和衛がくすっと笑った
「まだ、いたむけれどナ。平気」
うんしょ、とベッドの上に起き上がる
「馬鹿ッ寝てろッ」
叫んでドアに走り寄る、
和衛が叫んだ
「やめろよ、人呼ぶな」
「だって皆心配してる、
おま、馬鹿、おまえ、言ってる場合か」
静止も聞かず、ドアを開ける
ゆっくり、日が昇ってきた。
体を拭いてもらった和衛が、ぼんやりまどろんでいる。
その頬をちらりと見た後、また太陽を見上げると、
和衛がぽつり
「窓開けといて」
「虫、入るぞ」
「網戸」
「ん」
がらがらと網戸をひく、
さあ、っと風が入った。
太陽の匂いがする。
不意に、闇が恋しくなった―俺のいる場所は此処じゃない。
あの、地下、闇の、場所
光根が恋しい
「あいつ…見つかってないのか」
「…皆追ってる」
光根が恋しい
王は、「追うな」と言った
あいつの好きにさせてやれ、
俺があいつなら、追いたくない
俺は、追うだろうな。
和衛を裏切ったんだ、
許せるはずが無い
王宮に居る誰もが和衛を考え、
和衛のために、何かをしようとしている。
そう告げると、和衛はふうん、と言った。