許されるなら―光根―



「あっち行った、あっちだ」

かんかんかんッと固い靴が響く、
新品の、靴擦れのする。
固い靴。
和衛の傷はすぐに治ったけれど、
俺は彼女を追うことを止めなかった

和衛は死ぬところだった

「おい待てッ」

死ぬところだった

それを聞いたとき、どうしても彼女をつかまえたくなって

 自分の感情がよく分からない。
 激怒しているのか、
 彼女に聞きたいことがあるのか―それとも

 混乱していることは、確かだ


地下道、深く暗い闇
いるならば、ここだと想った

もうすぐ捕まえられる、その時、
マンホールの蓋がひらいて、
和衛が上から「落ちて」来た


「~~~~~~~~~~…」
あんまり怒ったものだから、
むっくり和衛の「下」でむくれていると、
和衛はぼーっと呟いた。
「お前さ、なんでそんな怒ってんの?」
「……お前が刺された」
「……ひはは」
「…何がおかしい」
「うれし」
嬉しい?
がばっと立ち上がる、和衛がうわあっと揺れる。
それを支え
「何がおかしい」
「嬉しいって」
いきなり和衛に抱きしめられた
和衛の目が涙にぬれているのをみて、

俺は焦った

「な、泣くな」
「お前おこんだもん」
嬉しいなぁ

そう言いながら、和衛が俺をぎゅうぎゅうする
苦しいよ

「うれし…クル、おこんだもん…」
「和衛…」
少し迷って、和衛を抱きしめた…
きっと、刺されてちょっと弱ってるんだこいつ
うん…、俺がついてないと

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