しばらく暑い日が続いている。
翼竜達が泣き喚き、
遠くの空が赤く潜んでいる。

水浴びをしていると、
青い色をした恐竜が通りかかった。
大丈夫、こいつはおとなしい、
草食。

知らん振りをして
水浴びを続けていると、
なんだか澄んだひとみでこっちをじっとみる。

あまつさえ、傍にしゃがみこんで、
しみじみと観察しだした。

「なんか変?」

無愛想に聞くと

「ちんちん洗ってあげようか」

馬鹿かこいつ。
誰とも分からない恐竜に
ちんちんをあらわせる奴がいるか。
草食だとしてもだ。

「なんかもうそろそろ、
この世界も駄目だネェ」

「…」

知るもんか、と顔をしかめて、
水気を飛ばす。そいつがうはーと笑った、

ねぇねぇと近づいてきて、ぴったり皮膚に張り付く。

「いいかげんにしろよ」

怒るとちょっとびっくりした目で、
なんでさ?と見上げる。

「食っちまうぞ」

「いいね、食ってよ」

「あほ」

食えるか。俺は面構えは立派なもんだが、
これでも草食なんだ。
面構えは立派だが。

「おにーさんイイ匂い」

こしこしと人の胸に頭を擦り付ける。
求愛のしるし。やめてくれ。

「おれぁ、男だぞ」
「おいらもおとこーいっしょだッ!」
「あほぉ」

しょうがないので、ごしごしと頭を撫でてやると、
なんだぁ、やめろぉ、と笑いやがった。

可愛い顔。
くそ、本当はこういう奴ちょっと好みなんだ。
色の青いところも。目の澄んでるところも。

もうちょっと話してたいなーなんて知られたら
こっちが食われてしまうかもしれない。


にーさん、カミの上の草葉さんでしょ。

…しってんのか?

肉食恐竜倒したんだってネェ、スゴイネェ。

…。



あれを倒してから、
汚名が広がった、
誰も俺に近づかなくなった。
「肉食の恨みを買った恐竜」

なんでこいつ、知ってて近づくの?



一緒にエッチして舟のろーよ、
舟のって、一緒に、次の星いこ、ね?


見上げると、金の星。
幾多にも。幾多にも。

赤く暮れていく蒸暑い中で、
ぼんやりと光ってる。





この世界も、 もう、 だめなんだろうな。






いきなりちゅっとキスされた。
なんだってんだ。前からずーっと見てたんですよ、
にいさん、ちーっとも気づかないんだもの。
よく喋る口だ。

一緒に舟に乗ってください。


想ったより、真剣な口調で頼まれた。
可愛い顔して。



そうだな、と一言つぶやいた。

そうだな。








俺たち恐竜は、まだ未来がある。