「あ~~~ほんと、おまえんちってなんもねぇ」
さっきまで人のもん咥えていた口で、
勝が言う。

人んちの冷蔵庫、勝手に開けながら。
「しゃーねーよ、金ねーもんさ」
「もんさじゃねーってばよぉ、
食うもん用意しておけよなぁ」

がりがりにやせ細った勝は、
そんでも大食漢だ。
気がつくと一日中なんか食べてる。虫でもいるんじゃないか。
とこの間言ったらあー、検査したから平気、ないってさ。と軽く言っていた。あほだ。

「いいからこっちさこい、勝」
「おまえねー、飯くわねーと腹へってできねーべよぉ」
煙草右手で持って、こんこん、と灰皿に落とす。
「おぅ」
嬉しそうに声上げて、なんだと思ったら、キャベツ取り出してやんの。
「やめーよ、おまえ、それ。
俺、おまえ、安いから買っといたのに」
「マヨネーズあるー?マヨネーズィ」
なんかもうメェきらきらさせて探してるの、
なんでそんな腹減るんだよ、やっぱなんか腹にいない?
ぎょうちゅうとか、エイリアンとか。
「悟のちんこで死滅してんだろ」
「ひでぇ、俺のちんこ死滅機器かよ」
「可愛い名前つけておこー」
「おこーじゃねーよ」
やっとマヨネーズを探し当てた勝は、
嬉しそうに―アライグマみたいに、キャベツを洗って、
びょるるるるっっとマヨをつけて、一枚口に含んだ。
「うめぇ、あーでも腹減った」
「たべてんだろーがよ」
「これじゃータリンよ」
「俺のちんぽくう?」
「輪切りにするよ?」
「ヒィッ」
抑えていてて、いてて、と悶えると、あははと笑う。
「悟のちんこ、じゃーキャサリンね」
「キャサリンって…おま。なにそれ」
「死滅機器。かわいい名前つけよー言うたじゃん」
「いや、なに、もっとかっこいいのにしようよ、
そんな女見たいのやだ、おかまになっちまう」
「えーじゃあ、ちんぽこ太郎?」
「なんだよその差はよおおおおっ」
がっくり頭を垂れると、そっと隣に勝が座った。
あのさー馬鹿ばっかり言い合って、こうやってふざけあって、
金もない二人だけどさ…。
俺、けっこうお前といる時、すげー、好きだ。
やばいぐらいさ、好きだよ。

「あのさー」
うん?
ぱくぱくしゃきしゃきキャベツを食う勝にちょっと見とれていると、
勝が急に俺に言った。
「俺のアナルはじゃあ、ジュリアナ?ネ?」
「………じゅりあな・・・」
「ケツの穴だから」
いひひひひって笑う。
力尽きた俺はそのまま勝に襲い掛かった。
こうしてくれるーっと言うと、キャベツがッキャベツがッと騒ぐ。

この馬鹿が俺の一番の、大事な奴です。