雨：人間

寂しい、苦しい、人としていきたい。いってしまえば
全てが崩れそうで


悲しかった


雨が、煙っている
裸にされた手足に、しとしと降注ぐ、ユキが足に接吻している

ユキ

こっから吸いたい

いたいから、や

しばらく、雨の音
吸血鬼のユキはまだ物欲しげに足指に舌を絡めている
くちぐったぁい

なぁユキ

こっから吸いたい

ユキ

トートー、今、さみし？

軽く小突かれるような問いに、動きがしく、と、止まる

顔、さみしそ

足の指を放して
俺の肩におおいかぶさる、ユキ

目をそらす、少し動揺している

雨
あめ？

傷がうずくんだ
そう

彼が、手のひらで愛しげにお腹を撫で、首をかしげてそこをみた
真っ赤に熟れた傷口





鞭打たれたこと、まだ、覚えている

俺はひとでなかった、ただの獣だった、飼われていた。
奴隷として。性欲処理の便器として。男たちのにんぎょうとして

笑って傷つけられ、笑ってののしられ、




ユキ

ん


あめ、なんでやまんのかな



ユキが、キスした、唇に噛み付く歯の柔らかさを感じながら、
思い出していた、

寂しいんじゃない。ユキ、寂しいんじゃない。
ただ、泣きそうなんだ

まだ、覚えている、言葉


「これからは、ね、僕が守ってあげる、からね、だから、」


「もう、だいじょうぶだ」

ユキの胸で、叫んだこと、殴ったこと、抱きしめられながら、その甘い戒めが

あたたかくて

あたたかくて

言われたくなかった
だいじょうぶだ、なんて
言われたくなかった
怖かった

こわかった

こわかった


俺を買った時
どのくらいお金払った？

ちょっとだよ

ちょっとか



ユキ







名前、呼ぶたび、あったかいものが胸に満ち、泣きたい
まだ、怖くて

ユキ


抱きしめて