ハッピーバースディ

缶コーヒーは、あったかかった。


誕生日だから、と言って、ユキサが買ってくれた、100円そこらのかんこーひー、
飲み込むたびに、目じりがじわっと熱くなって鼻がつんとなった。


父さんも、母さんも、今日は家に帰らない。
ひとりで闇に座っていたら、時計の音がやけに大きかった

私は夜の8時に生まれた、7時の鐘
そうして、雨合羽を着て外に出た


外は灰色の雨が深くも無く浅くも無く、海のように降っていた

鼻が痛い

何泣いてんノ、ユキサが言う

泣いてないけれど鼻が痛いね
笑うと、もう一個飲む、


飲まない


なんか欲しいのある

目の前の道を見る、遠い街が光に煙っている
コンビニの明かりが、ぼんやり影を落としている

ちゅうして。


ユキサが少し笑って



8時の鐘がなった



唇に、ユキサのあと


なぞっていると、またわらう

誕生日、おめでとう。