あーやりやり。

ぶっ壊れた手首を沼に浸す、
沼の電流がぷりゅぷりゅ流れて、
ゆっくり傷を修復していく。

あー。

いつになったら終わるんだろうかな。
このアンドロイド狩り。
今日も欲情してる男たちに追われて
手をぶっ壊されて足をぶっ壊されて
レイプされそうになりましたとさ。
このアンドロイド様は。

じゅううううっと、電流ウミウシが騒ぐ。
「騒ぐない、ちょっと充電するだけだからさ」
笑って一匹の背中をぽくぽくすると、
いきなり
「ハルミタサンッ」
と訳のわからないことを叫びながら、
一人の男が草陰から出てきた。

あ、まずい。充電中。立てない。
と思っていると、じーーーっとこっちを見てくる。吟味してんのか?
「あんさーやめてよ、武士じゃないよそんなの。
分かってる?俺充電してんのよ?」
「だってこうでもしないとおまえさん逃げるじゃないかー」
「たりまえだろ、誰が好き好んで男にケツマンされるかっての」
「け、け、ケツマ…ッわしの用事はそんな下劣なものではないわッ!!!!!」
男がぺっぺっと唾を飛ばさんばかりの勢いで怒鳴った。
「……わ、わしは、そのぅ…おぬしとつきあいたくてぇ」
もじもじーって感じで、真っ赤になりながら、しおれかけた菫を俺に突き出した。
「お、おぬしがぽわーんとしている時に惚れてしまいましたッ
勝手にハルミタサンと呼んでいますが、
よろしけれヴぁ名前をば頂戴したく、そしてゆくゆくはッ
お、お、お、お付き合いをバァ…っ…おつきあいをばッ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

なにこの馬鹿?

呆然と見ていると、手のすみに菫をおいて、
さっさと去っていく。

耳が真っ赤だ。
「おい、ちょっと」

「……」

「ちょっと…」

「ひぃ~~~~~~ん
わ~~~す~~~~~~~~
れ~~~~~~~~~~て~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

いきなりだダーっと駆け出した。
そんで草にぼーんと突っ込んで草まみれになってる。
「おーい」

草葉の陰でしゃがみこんでひっくひっくっとしゃくりあげ、
ちらっとこっち見て、真っ赤になってまたひっくひっくと…。

「おーい」

「………」

「おーい」


ぽそっとそいつがつぶやいた。しっぱいしたなぁ。

「何が、俺に告白したことかよ」
「…独り言聞くな。お主は卑怯じゃ」
「…聞こえたんだもんよ。はずかシーな、お前。アンドロイドに告白って。
好きって?名前をばって?」
見る見るなお一層真っ赤になっていく。
「おぬしなんかきらいじゃもん」
「そう…?俺結構お前のこと好きだよ?」
ばっと振り返った、じーっと俺を見て、また地面を見て、「のの字」を書き出す。
「ほ、ほんとー?」
「…うん、」
「だって今知ったばかりじゃーん」
ののじ、ののじ。
「うん、だからもっと知りたいなー」
「ほんとー?」
ののじののじ。
「ほんと…、な、こっちこいよ」
ちらっと俺を見て、ののじ書きながら、ずりっとちょっとだけ近づいた。
「もっと。こっちこいよ」
ずりずり。
「もっと。俺動けないんだからさ」

「…」

近づいてみると、なかなかいい男だ。
呆然としていたから分からなかったけれど。
無精ひげが可愛い。

「なんで俺のこと好きなの?」
「…わからん。武士の一生のふかくじゃ」
「ふかくかー」
笑うとドキドキしているみたいで、隣に座ってもじもじしてる。
またののじ書いてる。
「わしのこと、す、しゅ、しゅぅ、す、しゅふきか?」
「しゅふ?」
「シュキカッ!!!?」
どーん。鼻がひらいてふがふが言ってる。何この人間。
「んーなんだかとっても興味あるね」
「興味かー」
「もっと知りたいよ」
「知りたいかー」
もじもじーっとして嬉しそうに笑う。てへへ。

人間も、捨てたもんじゃないな。
ていうか。

こいつなら、犯されてもいいなー。
ふと思った。

「あ」
何してんだと思ったら充電している手をいきなり握られた。
馬鹿だ。ほら。感電してる。

馬鹿ダナァ。





可愛い。