ほほに手を寄せると
少し冷えた、利弘の肌が、
吸い付くように触れた。

―みこの手は大きいね

利弘が、寂しそうに微笑んで言う。
そのまま利弘のほほをたどり
唇を少し押すとあは、と笑って、
よけようとした、

ほほが離れて所在なげに左手を見ると
今度は利弘が私のほほに手を寄せた

―みことは顔ちっちゃいのに体ばかりでかくて

ようしょ、と、背伸びをする

利弘の冷たい唇が、かすめるように触れた、
あ、あ、と言いながら利弘が倒れそうになる
それをきゅうっと支えるふりをして抱きしめ、
もう一度唇に唇を重ねた、
利弘が小さな声で何か言った。

私達は以前教会で知り合った
孤児と孤児だった、
利弘はあの時5歳で、
私は10歳だった、
あの教会を出たのは17の時、
今の利弘と同じ年。
その日初めて利弘と接吻した。
教会を出た、その日に。

「利弘」
もう少し頼りある声が出したかったのに、
かすれた声しか出なかった。

今年、利弘は教会を出る。
もう里帰りと称して、
利弘に会いに来ることはできない。
寂しくて、寂しいと言ってしまいそうで、
なのに言えなくて、気が狂いそうなぐらい
離したくないと思った、
利弘が、そっと肩にほほを寄せた。

―俺、みことと一緒に住もうかな

えっ、と、利弘の顔を見る。
思いのほか真剣な顔で、私を見上げていた。