「おいちゃんのおーひーげー」
「らぶちゃん、くすぐったいぞお」

干支がふたまわりもできるほどに
年の離れたらぶちゃんは、
おいさんのおひげが大好きだ、
たまに家からさらってきては
こうして抱っこして散歩すると
風が涼しいのか外が珍しいのか
目を細めてきゃっきゃと喜ぶ。

―あにきもなぁ、大事にしすぎだぜ

「おひげーかびー」
「かびじゃないぞらぶちゃん」
ちょっとガーンとなりながら
ほおずりする。
らぶちゃんがいあんとくすぐったがる。
「ぱっぱおいちゃんのおひげは
かびみたいってゆーの」
「おお悪いぱっぱだな、
らぶちゃんそれは嘘だぞー」
「ぱっぱウソツキなの?」
ああ、いけない、ラブちゃんが泣きそうな顔をする
「あー違う違う、
ぱっぱはちょっと勘違いしてるだけさ
おいさんのおひげはかびじゃないぞ、らぶちゃん、
らぶちゃんをちくちくするためのものなのだ」
きゅっきゅっとほっぺすりつけると、
らぶちゃんがくっくと笑った、
身をよじって逃げようとする、
かわいいなぁ。

「らぶちゃん、ぱっぱとおいさん、
どっちがすきかなー?」
「しみちゅー」
「しみちゅなのぉ?」
「しみちゅー」
んーとらぶちゃんが俺を見上げる、
そのすとんとしたまっすぐな瞳に
汚いことも綺麗なことも
全部背負ってきた心が
少しきしむ。

兄貴が拾ってきた
ちっちゃならぶちゃん。

角が生えてるらぶちゃん。
可愛いラブちゃん。
これからなにがあっても
おいさんはらぶちゃんの味方だよ。

「ちゅう」
「うわぁっ」
らぶちゃんがいきなり背伸びをして
唇にちゅうしてきた、びっくりして
思わず手に力が入る
「んーくうしい」
「あ、ご、ごめんな」
なにをドキドキしているんだ、俺は
変態か。
「らぶちゃんそんなのどこで知ったんだ」
「ぱっぱするよー
すきだとするんだって、
らぶちゃんおいちゃんだーいすきだから、
ねぇ?」
「う、うん」
ったくあいつはまったくもお、
なにおしえてるんだよ。

帰ったらしかってやらなきゃなぁ、なんて思っていたら
小雨がぱらりと降ってきた。
「おお退散退散」
「たいしゃんたいしゃーん」
けらけらとらぶちゃんが笑った。
可愛いらぶちゃん。
兄貴の子供。