ときとき時が落ちる、
ゆらゆらとゆれるつり橋、
ほたるがひとつ、ひとつ飛んでいく。
「待ってよにぃちゃん」
「あんだ弱虫」
にいちゃんは笑いながら、わざと釣り橋を揺らす、
横にみょおんみょおん。
「やだぁ、怖いよ、やめてよ」
「あー泣き虫」
じんわりにじんだ涙を見て、にいちゃんはけらけら笑った。
「ほら、こいよ」
にいちゃんはそれでもやさしい、
あのいえん中で、一番やさしい。
にいちゃんの手のひらをぎゅうっと握ると
ちょっと怖さも薄れた。

「トキトキの花、あるかなぁ」
「さぁ」
「さあってにいちゃん、ないかもしれないの?」
「タヒツが弱虫だから見つからないかもなぁ」
にやにや笑いながら、にいちゃんが釣り橋を降りる。
慌ててぼくも降りる、にいちゃんの手はまだつながったまま。
「ぼく弱虫じゃないよ、あるよ、だから大丈夫だよ」
「さぁなぁ」
ちょっと寂しげな顔をして、にいちゃんが僕をみた、
その瞳が、少し熱を持ってる。
「にぃ」
「タヒツ、ほんとにママとパパ、
仲直りしてほしいか?」
「にぃちゃ」
「仲直りしてほしいと思うか?」
「どういう意味…にぃちゃん…」
「…別に」
にぃちゃんが空を見上げた、
真っ赤な、暗い夕焼け。
パパとママがりこんしたら、
僕らは離れ離れになるんだろうか、
にぃちゃんはもともと、「こじ」だから、
パパとママ、どちらも引き取りたがらない、
にぃちゃんの手をぎゅうっと握った。
手のひらがじんじん熱かった。
無言でにぃちゃんは進んでいく。

パパとママが、仲直りしてほしいのが、
僕の願いなんだろうか、
にぃちゃんの願いなんだろうか。

全ての願いをかなえる時時の花、
どうか見つかりますように。
心で祈って、涙を飲み込んだ。
苦かった。