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長編
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2004
> ななう
ななう
やど
あれから一週間経った、
僕は相変わらず七愛が好きで、
一度謝ってくれたものの、七愛は相変わらず僕が嫌いなようだった
そんな関係のまま、また温泉に行くことになった
「うわーひろーい」
うるが扉を開けたとたん、
白い湯気がわき出して、視界を覆った
実は僕は、七愛と温泉に入るたび、
七愛の素肌を見るたびに、きつい欲情を感じてしまうので、
一緒に入るのをさけていたのだが、
「たまにはみんなで入ろうよ」といううるの、
優しげな微笑み付きの言葉には逆らえなかった
見ないようにしているものの、ともすれば視線は七愛をとらえる
その度に僕はどきどきして、心音を押さえるのに必死だった
湯気に七愛が隠れた時、少しほっとして、よけいどきどきした
このサークルに入ったのは失敗だったかもしれない
「うる、走るなよ」
笑いながら、湯島が入っていく
湯気でよく見えないけれど、その後を七愛が続こうとして、ふと僕に振り向いた
「この間はごめんね、孔一」
「あ、い、いや、全然、全然」
僕は激しく首を振った、
うれしくてうれしくて、なんだか笑ってしまいそうだった
「孔一は僕のこと、好きなの?」
かあっと顔が真っ赤になったと思う、熱くなったから
「な、七愛が気色悪く思うなら…、やめるから」
慌てて僕は弁解した、
狂おしいぐらいに七愛が好きだった、
でもそんなこと、わかられちゃいけないんだ
「そ…、僕を抱きたいと思う?」
「!!!!」
僕は頭がぐちゃぐちゃになった
思う、と答えてしまいそうだった
「な、七愛が…きしょくわるいなら…」
もう自分で何を言っているのかわからない
手をぶんぶんと振り回している
きゅろっとした、何かを企んでいるような、疑問に思っているような
そのくせ何にも考えてなさそうな目の色で、七愛が首を傾げる
そのまま僕に近づいて
あ、と思う間もなく、
唇を重ねられた
すぐに離れたけれど、
僕にはそれで十分だった
「さ、入ろう」
七愛がにこやかに笑ってとを開けた
湯島が振り返ると、七愛が入ってくるところだった
その顔はひどいいたずらをして、うまくいった時のように
歪んだ笑みに輝いている
不信に思って、もっと奥を見ると、孔一がしゃがみこんでいた
「孔一!!」
湯島が走って彼に近づく
通り過ぎるとき、七愛が鮮やかに微笑んだ
うるも何事かと振り返る
よく見ると孔一は片手を顔にあて、
片手で下半身を押さえていた
「孔一、どうした?」
湯島が視線の高さを合わせて、顔を覗き込む
真っ赤になった孔一が泣きそうな目で湯島を見た、
手の隙間から血がたらたらと流れ落ちている
湯島はさっと青ざめた
「孔一!!!どうした!!!血が…」
「は、はなぢらから、ち、ちがう、ちかづからいれ」
ぶるぶると孔一が震える
「ろうしよ…ろうしよ」
「孔一、どうしたんだ?鼻血って、のぼせたのか?」
「ちかづからいっれ!!!」
「孔一?」
「やーだ、孔一、感じちゃったの!!?」
七愛がけたたましく笑った
瞬間に悟った、七愛がなにかしたのだ
「七愛、何をしたんだ!!孔一、上を向け
血、止めないと」
「さわららいれっ」
「キスしてぐらいでさ、ほんと、変態だね、あんた」
「七愛!!!」
後ろから、うるの叫び声のような叱咤が飛んだ
うるがお湯からあがって駆け寄ろうとする
「孔一、とりあえず、あっちに行こう、ここだと人が来るからな」
急に病気になったのかと、痛いほど不安になっていた湯島は、
原因と状態がわかって、怒りながらもほっとしていた
孔一の体に手をいれて、抱き起こす
びくん、と孔一の体がはねる
「落ち着いて…、孔一、大丈夫だから」
「ゆひま…やめれ」
「違う場所に行くだけだ」
「ひっ」
揺れるのか、孔一がひくつく、
湯島は自分自身の感情を抑えるのに必死になった
奥に連れて行って、そっと下ろすと、
孔一の鼻血は止まったらしい、ただ顔が真っ赤で、ほほに涙がつたっている
「鼻血、ふこうな」
ぬれたタオルで、顔を拭くと、孔一はいやいやをするように、顔をふった
「どうしよ…ぼく、ぼくまだ…」
「…」
湯島はそっと孔一のそれに手をあわせた
孔一が驚いたように湯島を見る、
「一回、やったほうがいい…いやか?」
「あ…ら、らめ、あ」
答えを聞く前に、湯島はそれをしごいていた
しぼるように何度も往復させる
「………!!!!!」
孔一が抵抗するように、湯島の手を触った
だけども、その手には少しも力が入っておらず、
湯島の感情を揺さぶるだけだった
「孔一、俺しかいないから」
「…………っん………」
「孔一」
「……………っ!!うっ!!!」
急に孔一の動きが止まった
どくっどくっと、それから液体が飛び散る
「は…はひ…は…」
すべてを絞り出すように
湯島が手を動かす
「は…七愛…はっ…七愛」
「孔一」
湯島は切なくなった
こんな目にあっても、孔一は七愛が好きなのか
やっと出し尽くすと、孔一はぼおっと壁に寄りかかって
視線を宙に浮かせた
後始末を終えた湯島が、孔一の服を持ってくる
「着替えたほうがいい、孔一
もう入る気しないだろ」
ぼんやり、それを孔一が受け取る
「着替えさせてほしい?」
湯島が微笑んで聞いた、
ぶんぶんと顔を振る
無言で孔一は着替え始めた
それを見届けて、湯島も自分の浴衣に着替える
走っていったうるが、なんだか肩を落として戻ってきたのを見て、七愛は笑った
何もかも馬鹿らしかった
特にうるは馬鹿者だ、と思った
「おかえりーうる、なに?孔一たち、やっちゃってた?」
「…!!」
無言になったうるが、風呂からあがるための片付けを始める
「もう少しここにいた方がいいんじゃないの?
部屋に戻ったら、あいつらいちゃいちゃしていたりして」
七愛がニヤニヤ笑う
「…ドライヤーんとこにいるから、いいよ」
うるが不機嫌に言って、タオルを持って、浴室から出て行った
浴室には七愛ひとりだけになった
七愛はじっと、うるの去った後を見て、それからお湯を見た
貧弱な自分の体が歪んで見える
あれ、と思ったら、泣いていた
七愛は涙が嫌いだ、なくやつは馬鹿だと思っている
すぐにぬぐって、鼻をすん、とならした
うるは馬鹿者だ
部屋に帰ると、布団がしいてあった
もうそんな時間だったっけ、
そういえば夕飯を食べ終わってから、直接湯殿にいったのだった
僕は霧がかっているようにぼおっとしながら、
布団の中に潜り込んだ
その横に、湯島が寝転ぶ
「なんだよ」
「なんでもないよ」
思えば湯島も変なやつだ、
あんなこと、するか、普通。僕が悪いのだけど、なんだか素直にありがとうとはいえなかった
「気持ち悪くないのか…」
「なにが」
「あんなとこ、触って」
「気持ち悪くないよ」
湯島が笑った
「気にすることない、よくあることだ」
湯島は穏やかな、だけどきっぱりした口調で、そう言った
だから、僕もやめることができた
なんだか泣きたくなって、布団をかぶって顔を隠した
湯島が僕を見ているのがわかった
なんで湯島はこんなに優しいんだろう
なんで七愛はあんなにいじわるなんだろう
なんでうるはあんなに穏やかなんだろう
なんだか何もかもどうしようもない気持ちになった
ゆっくりまぶたが垂れ下がる
暗い景色が真っ暗になる
いいや、寝てしまえ、寝てしまえ
数十分後。
規則正しい吐息をつきだしたのを見て、
湯島は孔一の布団を少しめくった
あどけない顔で孔一が寝ている
「……」
そっと唇を近づける
七愛を許せないのは、自分がこういう気持ちでいるからだ、と、湯島はわかっていた
七愛が誰を愛しているのか、とか
うるは誰が好きなのか、とか
みんな微妙にすれ違っていて、わかっていないのだろう
さて。
孔一のほほや、唇のぬくもりを感じながら、
湯島は考える
どうするのが一番いいのかな
孔一が俺を好きになってくれれば一番いいんだが
そのために俺が、孔一を誘惑する?
湯島は苦笑いを浮かべた
かすかに瞳がたゆんでいる
今の状態では、それはきっと無理だろう
かたん、たん
必要以上に音を立てて、うるが入ってきた
1時間後、
うるの体は冷えきって、寒かった
七愛があがってきたのを見て、自分が長いことそこにいたのを知った
一緒にかえるのはいやだったけど、
何事もなかったように七愛がはしゃぐから、
なんだかうるは責めることも怒ることもできなかった
「うる、風邪引かないでよー」
部屋に入りながら、七愛が無邪気に笑う
「七愛、あやまれよ」
うるが真剣な瞳で、七愛にいう
「ひどすぎるよ」
「……、キスしただけじゃん」
「だけじゃんって…!!」
「しぃっ」
部屋から出てきた湯島が微笑みながら人差し指を口にあててきた
「孔一、寝ちゃったから」
「げろげろ、そういや一緒に寝るんだった、
襲われないかなー俺」
けたけた笑いながら、傍若無人に、七愛が部屋に入っていく
「……七愛」
責めるように、うるがその後を追う
「……」
湯島はそっとため息をついた
まったく、強情なやつだ
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あれから一週間経った、
僕は相変わらず七愛が好きで、
一度謝ってくれたものの、七愛は相変わらず僕が嫌いなようだった
そんな関係のまま、また温泉に行くことになった
「うわーひろーい」
うるが扉を開けたとたん、
白い湯気がわき出して、視界を覆った
実は僕は、七愛と温泉に入るたび、
七愛の素肌を見るたびに、きつい欲情を感じてしまうので、
一緒に入るのをさけていたのだが、
「たまにはみんなで入ろうよ」といううるの、
優しげな微笑み付きの言葉には逆らえなかった
見ないようにしているものの、ともすれば視線は七愛をとらえる
その度に僕はどきどきして、心音を押さえるのに必死だった
湯気に七愛が隠れた時、少しほっとして、よけいどきどきした
このサークルに入ったのは失敗だったかもしれない
「うる、走るなよ」
笑いながら、湯島が入っていく
湯気でよく見えないけれど、その後を七愛が続こうとして、ふと僕に振り向いた
「この間はごめんね、孔一」
「あ、い、いや、全然、全然」
僕は激しく首を振った、
うれしくてうれしくて、なんだか笑ってしまいそうだった
「孔一は僕のこと、好きなの?」
かあっと顔が真っ赤になったと思う、熱くなったから
「な、七愛が気色悪く思うなら…、やめるから」
慌てて僕は弁解した、
狂おしいぐらいに七愛が好きだった、
でもそんなこと、わかられちゃいけないんだ
「そ…、僕を抱きたいと思う?」
「!!!!」
僕は頭がぐちゃぐちゃになった
思う、と答えてしまいそうだった
「な、七愛が…きしょくわるいなら…」
もう自分で何を言っているのかわからない
手をぶんぶんと振り回している
きゅろっとした、何かを企んでいるような、疑問に思っているような
そのくせ何にも考えてなさそうな目の色で、七愛が首を傾げる
そのまま僕に近づいて
あ、と思う間もなく、
唇を重ねられた
すぐに離れたけれど、
僕にはそれで十分だった
「さ、入ろう」
七愛がにこやかに笑ってとを開けた
湯島が振り返ると、七愛が入ってくるところだった
その顔はひどいいたずらをして、うまくいった時のように
歪んだ笑みに輝いている
不信に思って、もっと奥を見ると、孔一がしゃがみこんでいた
「孔一!!」
湯島が走って彼に近づく
通り過ぎるとき、七愛が鮮やかに微笑んだ
うるも何事かと振り返る
よく見ると孔一は片手を顔にあて、
片手で下半身を押さえていた
「孔一、どうした?」
湯島が視線の高さを合わせて、顔を覗き込む
真っ赤になった孔一が泣きそうな目で湯島を見た、
手の隙間から血がたらたらと流れ落ちている
湯島はさっと青ざめた
「孔一!!!どうした!!!血が…」
「は、はなぢらから、ち、ちがう、ちかづからいれ」
ぶるぶると孔一が震える
「ろうしよ…ろうしよ」
「孔一、どうしたんだ?鼻血って、のぼせたのか?」
「ちかづからいっれ!!!」
「孔一?」
「やーだ、孔一、感じちゃったの!!?」
七愛がけたたましく笑った
瞬間に悟った、七愛がなにかしたのだ
「七愛、何をしたんだ!!孔一、上を向け
血、止めないと」
「さわららいれっ」
「キスしてぐらいでさ、ほんと、変態だね、あんた」
「七愛!!!」
後ろから、うるの叫び声のような叱咤が飛んだ
うるがお湯からあがって駆け寄ろうとする
「孔一、とりあえず、あっちに行こう、ここだと人が来るからな」
急に病気になったのかと、痛いほど不安になっていた湯島は、
原因と状態がわかって、怒りながらもほっとしていた
孔一の体に手をいれて、抱き起こす
びくん、と孔一の体がはねる
「落ち着いて…、孔一、大丈夫だから」
「ゆひま…やめれ」
「違う場所に行くだけだ」
「ひっ」
揺れるのか、孔一がひくつく、
湯島は自分自身の感情を抑えるのに必死になった
奥に連れて行って、そっと下ろすと、
孔一の鼻血は止まったらしい、ただ顔が真っ赤で、ほほに涙がつたっている
「鼻血、ふこうな」
ぬれたタオルで、顔を拭くと、孔一はいやいやをするように、顔をふった
「どうしよ…ぼく、ぼくまだ…」
「…」
湯島はそっと孔一のそれに手をあわせた
孔一が驚いたように湯島を見る、
「一回、やったほうがいい…いやか?」
「あ…ら、らめ、あ」
答えを聞く前に、湯島はそれをしごいていた
しぼるように何度も往復させる
「………!!!!!」
孔一が抵抗するように、湯島の手を触った
だけども、その手には少しも力が入っておらず、
湯島の感情を揺さぶるだけだった
「孔一、俺しかいないから」
「…………っん………」
「孔一」
「……………っ!!うっ!!!」
急に孔一の動きが止まった
どくっどくっと、それから液体が飛び散る
「は…はひ…は…」
すべてを絞り出すように
湯島が手を動かす
「は…七愛…はっ…七愛」
「孔一」
湯島は切なくなった
こんな目にあっても、孔一は七愛が好きなのか
やっと出し尽くすと、孔一はぼおっと壁に寄りかかって
視線を宙に浮かせた
後始末を終えた湯島が、孔一の服を持ってくる
「着替えたほうがいい、孔一
もう入る気しないだろ」
ぼんやり、それを孔一が受け取る
「着替えさせてほしい?」
湯島が微笑んで聞いた、
ぶんぶんと顔を振る
無言で孔一は着替え始めた
それを見届けて、湯島も自分の浴衣に着替える
走っていったうるが、なんだか肩を落として戻ってきたのを見て、七愛は笑った
何もかも馬鹿らしかった
特にうるは馬鹿者だ、と思った
「おかえりーうる、なに?孔一たち、やっちゃってた?」
「…!!」
無言になったうるが、風呂からあがるための片付けを始める
「もう少しここにいた方がいいんじゃないの?
部屋に戻ったら、あいつらいちゃいちゃしていたりして」
七愛がニヤニヤ笑う
「…ドライヤーんとこにいるから、いいよ」
うるが不機嫌に言って、タオルを持って、浴室から出て行った
浴室には七愛ひとりだけになった
七愛はじっと、うるの去った後を見て、それからお湯を見た
貧弱な自分の体が歪んで見える
あれ、と思ったら、泣いていた
七愛は涙が嫌いだ、なくやつは馬鹿だと思っている
すぐにぬぐって、鼻をすん、とならした
うるは馬鹿者だ
部屋に帰ると、布団がしいてあった
もうそんな時間だったっけ、
そういえば夕飯を食べ終わってから、直接湯殿にいったのだった
僕は霧がかっているようにぼおっとしながら、
布団の中に潜り込んだ
その横に、湯島が寝転ぶ
「なんだよ」
「なんでもないよ」
思えば湯島も変なやつだ、
あんなこと、するか、普通。僕が悪いのだけど、なんだか素直にありがとうとはいえなかった
「気持ち悪くないのか…」
「なにが」
「あんなとこ、触って」
「気持ち悪くないよ」
湯島が笑った
「気にすることない、よくあることだ」
湯島は穏やかな、だけどきっぱりした口調で、そう言った
だから、僕もやめることができた
なんだか泣きたくなって、布団をかぶって顔を隠した
湯島が僕を見ているのがわかった
なんで湯島はこんなに優しいんだろう
なんで七愛はあんなにいじわるなんだろう
なんでうるはあんなに穏やかなんだろう
なんだか何もかもどうしようもない気持ちになった
ゆっくりまぶたが垂れ下がる
暗い景色が真っ暗になる
いいや、寝てしまえ、寝てしまえ
数十分後。
規則正しい吐息をつきだしたのを見て、
湯島は孔一の布団を少しめくった
あどけない顔で孔一が寝ている
「……」
そっと唇を近づける
七愛を許せないのは、自分がこういう気持ちでいるからだ、と、湯島はわかっていた
七愛が誰を愛しているのか、とか
うるは誰が好きなのか、とか
みんな微妙にすれ違っていて、わかっていないのだろう
さて。
孔一のほほや、唇のぬくもりを感じながら、
湯島は考える
どうするのが一番いいのかな
孔一が俺を好きになってくれれば一番いいんだが
そのために俺が、孔一を誘惑する?
湯島は苦笑いを浮かべた
かすかに瞳がたゆんでいる
今の状態では、それはきっと無理だろう
かたん、たん
必要以上に音を立てて、うるが入ってきた
1時間後、
うるの体は冷えきって、寒かった
七愛があがってきたのを見て、自分が長いことそこにいたのを知った
一緒にかえるのはいやだったけど、
何事もなかったように七愛がはしゃぐから、
なんだかうるは責めることも怒ることもできなかった
「うる、風邪引かないでよー」
部屋に入りながら、七愛が無邪気に笑う
「七愛、あやまれよ」
うるが真剣な瞳で、七愛にいう
「ひどすぎるよ」
「……、キスしただけじゃん」
「だけじゃんって…!!」
「しぃっ」
部屋から出てきた湯島が微笑みながら人差し指を口にあててきた
「孔一、寝ちゃったから」
「げろげろ、そういや一緒に寝るんだった、
襲われないかなー俺」
けたけた笑いながら、傍若無人に、七愛が部屋に入っていく
「……七愛」
責めるように、うるがその後を追う
「……」
湯島はそっとため息をついた
まったく、強情なやつだ